遠隔授業を準備し、実施する上での注意点

更新日:2020年4月 6日

1)遠隔授業(遠隔教育)の位置づけと特色
1-1)高等教育における遠隔教育

新型コロナウイルスへ対応への取り組み以前から、高等教育におけるICT 活用や遠隔教育は、以下の点をねらいとして推進されています。

・学生が主体的に学修するアクティブ・ラーニングへの展開
・教育の質向上や大学の知の国内外へ発信
・ICT の活用による生涯を通じた学習機会の提供
・AI 時代に対応できる能力

(文部科学省資料「高等教育におけるICT 活用教育について」)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/09/10/1409011_5.pdf

1-2)遠隔授業に関する前提

大学設置基準等の法令において、遠隔授業に関する基本的な考え方が下記のように定められています。それとともに、新型コロナウイルスへ対応における遠隔授業の方針や弾力的運用についても、文部科学省通知で言及されています。

・同時双方向型(テレビ会議方式等)とオンデマンド型(インターネット配信方式等)
・修得単位数の上限(感染リスク低減のための弾力化)
・学修時間、授業時間
・その他共通的な留意事項

(文部科学省資料「大学における多様なメディアを高度に利用した授業について」)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/09/10/1409011_6.pdf

(文部科学省通知「令和2 年度における大学等の授業の開始等について」(3.遠隔授業の活用について))
https://www.mext.go.jp/content/20200324-mxt_kouhou01-000004520_4.pdf

 

1-3)遠隔授業のメリット・デメリット

オンラインという特殊な環境下で有効な教育を行うには、以下のメリットとデメリットに注意しながら実施する必要があります。
なおここでの遠隔教育には、複数の学校間を結ぶ授業も含まれているため、今回本学で実施するような、個別での学習を基本とする遠隔授業には当てはまらない点もあります。

<メリット>
・学習者がどこでも授業が受けられる。学習者とのコミュニケーションも可能。
・教師もどこでも授業実施が可能。複数の教師・協力者も別々に参加可能。
・スマートフォン、タブレットの使用による操作の手軽さ。持ち運びの容易さ。
・オンデマンドの場合、いつでも受講可能。
・講義、パワーポイント、資料、動画等の組み合わせ。
・学生のレベルや関心に応じた内容の取捨選択。柔軟な学習ペース。
・学習履歴(出席、内容等)の把握。

<デメリット>
・視野の狭さ、フレーミング。
・学生の緊張感、集中度の不足(学生・方法によっては、逆に効果的な場合もある)。
・学生の理解度、発言、態度等の把握(特にオンデマンドの場合)。
・実習、作業等の準備。集団での活動。
・対面でのディスカッション(技術的煩雑さ、ルールの設定)。
・情報セキュリティ(第三者からの攻撃・漏洩)、情報モラル。
・健康面(身体的、精神的)への影響。
・コミュニケーションのとり方。人間形成における、対面で学ぶことの意味。

(文部科学省「教育の情報化に関する手引」概要)
https://www.mext.go.jp/content/20191219-mxt_jogai01-000003284_001.pdf

(文部科学省タスクフォース「遠隔教育の推進に向けた施策方針」)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/14/1409323_1_1.pdf

((株)VTV ジャパン「遠隔教育ガイド」)
http://www.tv-remote.net/merit/

 

2)遠隔授業の準備と実施
2-1)遠隔教育の分類、接続形態

遠隔教育の分類および接続形態は、以下の通りです。
また、遠隔授業のイメージについては、リンク先(国立大学教養教育コンソーシアム北海道)の広報ビデオをご覧下さい。

A 多様な人々とのつながりを実現する遠隔教育(合同授業型) A1 遠隔交流学習
A2 遠隔合同授業
B 教科等の学びを深める遠隔教育(教師支援型、教科・科目充実型) B1 ALTとつないだ遠隔学習
B2 専門家とつないだ遠隔学習
B3 免許外教科担任を支援する遠隔授業
B4 教科・科目を充実するための遠隔授業
C 個々の児童生徒の状況に応じた遠隔教育(その他) C1 日本語指導が必要な児童生徒を支援する遠隔教育
C2 児童生徒の個々の理解状況に応じて支援する遠隔教育
C3 不登校の児童生徒を支援する遠隔教育
C4 病弱の児童生徒を支援する遠隔教育

・教室-教室接続型、講師-教室接続型、講師-学習者接続型、学習者-学習者接続型

(文部科学省「遠隔教育システム活用ガイドブック」)

https://www.mext.go.jp/content/1404424_1_1.pdf

(国立大学教養教育コンソーシアム北海道 広報ビデオ「新たな授業方法の開発~デジタル教材の活用~」)

https://www.nucla-hokkaido.jp/public_relations_video.html

 

2-2)遠隔授業の準備

授業資料、録音音声、ビデオなどを作成する際の注意点や配慮すべき点は、以下の通りです。

・ICT 機器の選定(遠隔会議システム、マイク・スピーカー、大型提示装置、カメラ、協働学習用ツール)。
・ICT 機器の配置。環境構成。
・プレゼン資料の作り方
(1 スライド1 メッセージ。文字数をなるべく減らす。
必要なことを過不足なく伝える。
聞き手が理解できる言葉で伝える。
グラフは一目で何を表しているのか分かるようにする。
Z の法則、F の法則を意識してレイアウトを考える。
フォントのサイズは18pt 以上。種類はメイリオ推奨。
同じ要素は隣り合わせに。余白を作ることを意識する。1スライドに使う色は5 種類まで。)

(文部科学省「遠隔学習導入ガイドブック(第3 版)」)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1364592.htm

(Udemy メディア「見やすいプレゼン資料の作り方!パワーポイントのデザインと構成の作り方を解説」)
https://udemy.benesse.co.jp/office-enhance/business/document-making.html

 

2-3)遠隔授業の実施

遠隔授業においては、見っ放し、聞きっ放しの授業に終わらせない工夫が必要です。
「授業→復習」という形式を「予習(ビデオ講義)→共有・討論(オンライン)」へと変える反転授業や、掲示板やチャットによるコンピュータ上の協調学習が考えられます。

・学習活動(教員による説明や発問。黒板や教材の共有。全体で行う発表や話し合い。ペアやグループで話し合う活動。協働学習用ツールなどを使って行う情報共有。)
・反転授業(教室での対面授業と自宅学習(予習→e ラーニング)を反転)
・協調学習、CSCL(computer supported collaborative learning)(複数の学習者同士がお互いにコミュニケーションをとりながら学び合う(知識構築や問題解決を行う)学習をコンピュータによって支援)

(文部科学省「遠隔学習導入ガイドブック(第3 版)」 再掲)
(マイナビキャリア教育ラボ「反転授業とは」)
https://career-ed-lab.mycampus.jp/career-column/1331/

(東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育技術学講座「魅せます、CSCL のすべて:1 日でわかる協調学習」)
https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/seminar/012.html

 

2-4)情報セキュリティ・情報モラル

遠隔授業においては、教材作成、manaba 等へのアップやリンク、双方向での討論等、通常以上に情報セキュリティや情報モラルに留意する必要があります。
全国の教育機関でオンラインでの授業が実施される中、あらためて下記の点をご確認、ご指導下さい。

・データや書類等の管理。
・PC のログオン、パスワード、ファイル等の管理。
・電子メール、WEB アクセス、ソフトウェア、機器等の管理。
・著作権や肖像権への配慮。

(文部科学省「学校における情報セキュリティ及びICT 環境整備等に関する研修教材」)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/04/06/1369637_003.pdf

(文部科学省「情報化社会の新たな問題を考えるための教材」)
https://www.mext.go.jp/content/1416322_002.pdf

 

3)遠隔会議システム等で行う実時間授業において配慮すべき点

遠隔授業においても、対面での授業と同様に以下の点に配慮する必要があります。
特に、a) PC 上で講義を行う説明を配信する方式では、「教室」の概念が対面授業とは異なるので、教材の組み合わせや動きを工夫することが求められます。
また、b) 黒板の前で行う授業をカメラで撮影して配信する方式は、カメラが学生の「目」や「耳」となるため、カメラの特性や限界をふまえた提示や撮影のしかたに対する配慮が必要です。

・教師の話し方(テンポと強弱。ボディランゲージ。学生に顔を向ける。ポイントを多様な方法で表現。自分なりの講義口調。)
・学生に理解し消化するための時間的余裕。
提示物の大きさ。
ズームアップと画角。
画面や板書の保持。
ハンドアウトの配布。
統計資料やグラフ、図表、地図などの活用。
・一体感をもった授業を行うための工夫(学生の指名。学生を同等に尊重。意見のつながり。名前の提示。考えの違いを顕在化させる視覚支援。)
・板書の留意点(内容。位置。字の大きさや太さ。使用する色。)
・電子メール、掲示板等による質問。
授業中のチャット、ツイート。

(名古屋大学高等教育研究センター「成長するティップス先生」)
http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/tips/basics/performer/index.html

(大阪大学全学教育推進機構教育学習支援部 遠隔授業を行うためのウェブサイト)
https://www.tlsc.osaka-u.ac.jp/news/2020/03/post-8.html

(学校法人角川ドワンゴ学園N 中等部「オンライン授業報告レポート」)
https://n-jr.jp/news/archives/280.html

 

4)教育効果の評価
4-1)学生に対する評価

対面での授業同様、以下の方法が考えられます。電子メール等を用いたやり取りのほか、manaba の活用も可能ですが、学びの過程をどのように評価するかについては配慮が必要です。

・小テスト
・アンケート
・レポート
・個別指導

(筑波大学「学習管理システム(manaba)教員用マニュアル」)
https://www.ecloud.tsukuba.ac.jp/manaba

 

4-2)遠隔授業に関する学生からの評価

遠隔授業の教育効果を評価するには、例えば以下の観点について学生の意識をアンケート等によって把握することが考えられます。対面授業との比較を行うことができれば、遠隔授業の効果や課題がいっそう明確になります。

・教師の視線、表情、しぐさ。
緊張感。説明や助言、コミュニケーション。
学習意欲。参加意識。
生徒の状態把握。
疲労。
内容理解。
進度。特別さ。
・見易さ、講義資料の利用、声の聞き易さ、集中度 、発言。
・回答・質問のし易さ・恥ずかしさ、授業内容への興味、満足度、遠隔授業の必要性。

(谷田貝雅典, 坂井滋和(2006).「視線一致型及び従来型テレビ会議システムを利用した遠隔授業と対面授業の教育効果測定」.『日本教育工学会論文誌』, 30(2).)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/30/2/30_KJ00004964122/_article/-char/ja/

(後藤正幸, 中澤真, 湯田亜紀, 三浦円, 大野昭彦, 萩原拓郎(2006).「インターネットを用いた大学間連携による遠隔授業の開発と評価」.『武蔵工業大学 環境情報学部 情報メディアセンタージャーナル』, 第7 号.)
http://www.comm.tcu.ac.jp/cisj/07/07_01.pdf


本コンテンツは人間系 教育学域 樋口直宏先生に提供していただきました。