資料と著作権について

更新日:2020年4月 30日

著作権法第35条は,授業で使用することを目的とした場合に,著作物を権利者の許諾なしに複製することを認めています.従来,この権利は授業時間内に限られており,例えば,授業時間外に著作物を含む資料を学生に配布することや,授業時間外にもmanabaなどで資料を取得できるようにするためには,権利者の許諾が必要でした[1][2][3].

2018年5月に著作権法第35条が改正され (2020年4月28日に施行予定) ,教育機関設置者が授業目的公衆送信補償金を一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会 (SARTRAS) に支払うことで,権利者の許諾を得ることなく,授業時間外での著作物の配布などができるようになりました[4][5].

なお,著作権法第35条以外に,第32条 (著作物の引用) などで利用が認められる場合があります.

第35条の補償金を支払う必要がある場合

授業を録画して,授業時間外に配信する場合,録画された著作物に対して権利者の許諾が必要です.許諾を得ていない場合は,補償金の支払いが必要です.

また,著作権法第35条では,対面授業をしている映像を,別の場所で授業を受けているものに,同時配信する場合も,著作物を権利者の許諾なしに複製することを認めています[1][3]が,教員のみがいる部屋で行った授業の映像を同時配信する場合(対面授業をしていない)や,対面授業を録画して,別な時間に配信する(同時配信ではない)場合は,補償金の支払いが必要です.

改正著作権法第35条運用指針と今後の運用について

2020年4月16日に,著作物の教育利用に関する関係者フォーラムは,改正著作権法第35条運用指針(令和2(2020)年度版)[6] を公表し,これに基づき,2020年度は以下の運用を行うことを示しました [7].また,2021年度から本格的な運用が開始できるように,今後の議論を建設的速やかに進めるともしています [7].

  • 2020年度に限って補償金額は無償で認可申請を行う
  • この制度を利用する教育機関の設置者は,事前に(事前が難しい場合は,利用開始後速やかに) SARTRAS に対して教育機関名の届け出を行う
  • SARTRAS は,教育機関に過度な負担がかからない範囲で著作物の利用実績を把握するため,教育機関の協力を得てサンプル調査を行う

運用指針 [6] は,改正著作権法第35条の用語を具体的に定義するもので,例えば,第35条にある「授業」として,講義,実習,演習,ゼミ,教員免許状更新講習,公開講座,履修証明プログラムなどは該当するが,学校説明会,オープンキャンパスでの模擬授業,教職員会議,FDとして実施される教職員を対象としたセミナーや情報提供などは該当しないとしています.

また,補償金を支払った場合でも,「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は権利者の許諾が必要ですが,これに該当する可能性が高い例として,「授業を行う上で,教員等や履修者等が通常購入し,提供の契約をし又は貸与を受けて利用する教科書や,一人一人が演習のために直接記入する問題集等の資料(教員等が履修者等に対して購入を指示したものを含む。)に掲載された著作物について、それらが掲載されている資料の購入等の代替となるような態様で複製や公衆送信すること」や「組織的に素材としての著作物をサーバーへストック(データベース化)すること」などを挙げています.

このように,第35条で補償金を支払った場合に複製が可能かどうかの判断は,運用指針 [6] を参照することによって,ある程度明確になるものと思われます.

[1] 文化庁, 著作物が自由に使える場合,
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html
[2] 放送大学, 大学教員のためのICT活用ヒント集 Q&A集 著作権者の許諾なしに授業で著作物を利用できる”権利制限”とは,
http://fd.code.ouj.ac.jp/tips/qanda/q53.html
[3] 放送大学, 大学教員のためのICT活用ヒント集 Q&A集 授業のためであれば著作物を公衆送信できるようになったと聞いたことがありますが,どのような場合に公衆送信できるのですか, http://fd.code.ouj.ac.jp/tips/qanda/q102.html
[4] SARTRAS, 学校教育と著作権(著作権法35条),
https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/easy_remuneration.pdf
[5] 文化庁、授業目的公衆送信補償金制度の早期施行について、
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/92169601.html
[6] 著作物の教育利用に関する関係者フォーラム, 改正著作権法第35条運用指針(令和2(2020)年度版), https://forum.sartras.or.jp/wp-content/uploads/unyoshishin2020.pdf
[7] 著作物の教育利用に関する関係者フォーラム, 「授業目的公衆送信補償金制度」の今後の運用について, https://forum.sartras.or.jp/wp-content/uploads/kongounyo.pdf

適法引用

※本項目は,京都大学高等教育研究開発推進センター「著作物の引用チェックリスト」
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/copyright/document/01KUOCW_Guideline.pdf
を参考とさせていただきました.

・著作物引用の際のチェック項目

著作権法第32条は,「公表された著作物は,引用して利用することができる.この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」として,著作物の引用の要件を定めています.著作物を適正に引用するためには,以下のような要件にも気をつけてください.

(1) 「引用される著作物」が公表済みのものであること.

  • 未公表のメモ,手紙,日記,論文等は対象外です.

(2) 「引用される著作物」が,「引用側の著作物」と明瞭に区別できること.

  • 論文や図書等の文字による著作物は,カッコ記号,段落変更,フォント変更等で引用箇所と地の文を区別して示すことが必要です.
  • 図表,写真,絵画等の文字によらない著作物は,引用箇所に注記をつける,出所を明示するという形で区別が必要です.

(3) 「引用される著作物」について,タイトルや著作者等の「出所の明示」をしていること.

  • 原則としてタイトルおよび著作者名を表示します.
  • 雑誌論文・雑誌記事は掲載誌名と巻号,出版年等の表示,書籍等は出版社名と出版年,必要に応じて掲載の版等を表示します.
  • 出所の明示は「「引用される著作物」に近接して表示します.

(4) 「引用側の著作物」が主,「引用される著作物」が従の関係があるといえること.

  • 講義のために引用の必要性があること(引用の目的と必然性).
    必要性がないのに参考程度として掲載,また写真等を鑑賞させるために掲載,という目的の場合は不可です.
  • 引用箇所が目的に照らして必要以上の分量ではないこと.
    引用箇所が地の文より分量が多い場合は,主従関係が逆転しているとみなされる可能性大です.そうではない場合も,引用は必要な範囲にとどめましょう.
  • 「引用される著作物」の一部を勝手に改変・削除しないこと.
    引用の形自体が不適切な場合は適法引用となりません.
・参考